自分に負けそうなときに読む話
自分に負けた日
中学1~2年の頃だった。「勉強しよう!」そう思い立ち机に向かったものの、気がついたらマンガを手にしている自分がいた。
「今度こそ!」そう決意するものの、良くて数日、悪ければ数時間で同じ状況に。
マンガは机の下にきれいに並べてあり、手を伸ばせばすぐに手に取ることができる。この環境では、決意なんて、あってないようなもの。
「ふぅ~」ちょっと一息つくと手が伸びる。
「んー、…」勉強に詰まると手が伸びる。
「このままではいけない」とマンガをしまう。しかし、机の方をチラッと見ても、勉強に気持ちは向かわない。
やらなきゃいけないとは分かっている。
後で後悔はしたくない!
けれど、やる気が出てこない!!
テスト前に掃除をしたくなる理由
「そうだ、片づけをしよう。片付けたら勉強する気になるかもしれない」
そう思い立ち、片づけを始める。勉強は進んでいないが、やるべきことの一つをやっているので、マンガを読んでいるより罪悪感が少ない。
大人になってから知ったのだが、心理学ではこのようなことを「セルフ・ハンディキャッピング」と言う。目標達成に失敗したときのために、失敗する要因を自分で作っておくことで、心理的なダメージを回避しているのだ。無意識で行っているから、性質(たち)が悪い。
その上、片付けついでにアルバムを見て想い出に浸っている自分がいた。( ´д`ll) あぁ…
自分は弱い、と気がついて…
何度か自分に負けて気がついた。自分は弱い。マンガがすぐ手に届く所にあっては誘惑に負けてしまう。だから、手の届かないところに封印しよう。意志の力ではなく、環境を整えることで自分を制御しようと考えたのだ。
現に、マンガを取り出しにくい本棚の奥にしまうと、4~5日は効果があった。しかし、一度取り出し方を知ってしまうと、制御が利かなくなってくる。取り出すのにも慣れてきた。気がついたらマンガを読んでいる自分がいた。
このマンガは何回読んでいるのだ?!(ノД`ll)
自分との闘い
「もっと取り出しにくい場所に封印しよう」
再度思い立ち、マンガをダンボール箱につめ、ベッドの下にしまった。しかし1週間ほどすると、マンガを手にしている自分がそこにいた。
「これではいけない!もっと強力な何かが必要だ!」
そこで「絶対に開けるな!」と大きく書いた紙をダンボール箱に貼った。そして、箱をベッド下の奥の方へやり、重い荷物を前に置いた。これなら簡単に取り出せない。大丈夫だろう。
人生の別れ道 物理的に遮断し、決意をもって臨んだだけに、1週間はもった。しかし1週間後、「絶対に開けるな!」の紙と対峙(たいじ)している自分がいた。
開けてはいけない。しかし手が伸びる。開けてはいけない!ぐっとこらえる。けれど開けようとしている自分がそこにいる。とうとう紙に手をかけて、……。……、ペラ、……!
最後の最後で踏みとどまった。箱を元の場所へと追いやり、重い荷物で封印した。「ここで開けたら、人生が終わる」そんな考えが頭をよぎったのを覚えている。
意志あるところに道はある
もしも、あの日自分に負けていたら、今も自分に負け続け、思うように行かない人生をぐだぐだと送っていたことだろう。
しかし、あの日踏みとどまれたからこそ、今でも自分を律し、自分らしく自由でいられる。あの日の自分に感謝。
誰もが、自分に負けそうになる日がある。そんな時は、人間は弱いということを前提に、誘惑に惑わされない環境を整えることが大事だ。そして、精神論と言われるかもしれないが、強い意志をもって立ち向かうことが大事である。
「意志あるところに道はある」のだから。